子どもの幸福度が高い国として、オランダが有名です。
その中でも、オランダの教育はすばらしい!と、
近年日本で紹介されるようになりました。
私がオランダに出会ったのは2015年9月。
その出会いに衝撃を受け、2017年に1回、2018年に2回、2019年に2回、計6回視察に行きました。(視察以外の渡蘭を入れると、7回です。)
視察した学校や、20校以上の小中学校と教員養成大学。
教育手法は、イエナプラン教育、ダルトン教育、多重知性理論教育、シュタイナー教育、モンテッソーリ教育、テクナジウム教育等、様々な手法の学校に行きました。
実際に、定期的なオランダの教育現場へ視察に行き、
小・中・高・大学の視察や、オランダの先生、オランダのコーチとの出会いから、
オランダの教育について、まとめていきます。
前回は、「オランダの教育の特徴は?」という記事を書きましたが、
今回は、「オランダと日本、教育の違い」について、書いていきます。
※オランダの教育現場の変化スピードはとても速く、行く度に代わっていることを感じています。そのため、あくまで2019年10月の視察までの情報となります。ご注意ください。
受験
日本→受験があります。
オランダ→受験がありません。
受験があるか、ないか、この違いがあります。
そして、この違いこそが、とても大きいように感じます。
受験が存在する日本。
いい就職をするために、いい大学を出ること。
いい大学に入るために、大学入試で合格しなければならない。
大学の進学率に、高校の偏差値が関係してくる。
進学率が高い高校に入ったほうがいい!
そのためには、高校入試で、合格というひとつの勝利を得なければならない。
今も日本に、存在するシステムと価値観です。
高校受験には、中学の内申点が関係してきます。
相対評価があるということで、クラスの中で順位が生まれます。
同じクラス、仲間の中で競争が存在している。
日本の特徴かと思います。
受験がないオランダ。
クラスの中に、順位や競争が存在しません。
そのため、自分のペースでの学び、自分を育むための学び、自分のための学びが実施されています。
行きたい学校へ行くことは可能であり、
受験や他者評価を気にすることなく、
自分のペースで、自分を育てていくことができます。
留年と落第
日本の小学校・中学校に留年と落第がありません。
明らかに授業についていけなかったとしても、出席日数が少なかったとしても、
成績や理解度がおいついていなかったとしても、全員が自動的に進級ができます。
みんなが同じように、学年をあがり、卒業していきます。
オランダでは、小学校から留年や落第が存在します。
理解が伴っていないまま、進級することはせず、
親も「もう一年、同じ学年に行かせます」と、留年を希望する場合もあります。
オランダでは「できた」を積み重ねること
自分のペースで成長すること
を大切にしています。
理解が伴っていないまま、次の学年に進級して困るのは誰でしょうか?
理解が伴っていないまま、次の学年に進級したらどうなるでしょうか?
「できた」を積み重ねていけば、理解は増え、理解は深まります。
だから、「身の丈にあった学び」を大事にしています。
これは、オランダの学校の先生がおっしゃっていたことです。
ないより、いつからでも、何度でもやりなおしがきく環境。
できないこと、やりなおすことが、恥ずかしいことでもいけないことでもありません。
オランダの学校の「卒業」は、
この年齢で必要な学力を身につけたということが認められての卒業になります。
塾の存在
日本には、塾があります。
受験対策で塾に通う子どももいますが、
それ以外にも、学校の授業理解が追いつかないから、塾に通う子どももいます。
はやければ4歳ごろから通います。
小学生や中学生の、塾の利用率は年々高くなっています。
塾と受験は、密接に関係してようです。
オランダには塾がありません。
勉強は、学校で先生が責任をもって、教えています。
授業中にしっかり学び、学校の中で理解させていく。
小学校では宿題がない場所がほとんどです。
(中学校では、勉強が難しくなり科目数も多くなり、宿題も出てきます)
なぜ学校があるのに、他の場所で勉強を教わる必要があるの?と
オランダに行ったときに質問をされました。
教科書や教材は・・・
日本では、一人ひとりに教科書を渡します。
毎年、学年が変わるごとに、新しい教科書をもらいます。
教科書は、毎回自宅で保管して、
時間割にあわせて、必要なものをかばんにいれて持ってきます。
また使用する教科書や教材は決められています。
文房具やノート、絵の具、習字道具などは、
それぞれの家庭で購入し、学校に持参します。
自分で自分のものを用意します。
オランダは、教科書がレンタルになります。
学校が保管し、子どもたちに貸し出します。
教科書は、使えなくなるまで、何度でも使います。
そのため、10年くらい使われているものもあるくらいです。
そのため、教科書に書き込みなどは禁止されています。
教科書は、学校に持って帰ります。
ワークブックや1人1人に渡されます。
ワークブックやノートには、書き込みが可能です。
ワークブックも、学校において帰ります。
筆記用具、絵の具などの勉強に必要なものは、
すべて学校が用意しています。
それらを使うことができます。
個人で購入する必要はありません。
※2020年現在は、電子教科書(タブレットの中に内包されている)学校も増えていました。
入学式と学期、休暇
日本は、入学式があります。
新年度は、4月からはじまります。
同じ時期に、一度に子どもたちが進級します。
学期は3学期にわかれています。
休みは、夏休み、冬休み、春休みと長期休みがあります。
長ければ1ヶ月、短ければ2週間ほどの休みです。
個人の希望や理由で、子どもが学校を休むことができます。
学校にいかないことが許される環境でもあります。
通常の学校にいかない子どもたちが、フリースクールやホームスクーリングなどを
行うこともあります。
オランダは、入学式がありません。
4歳の誕生日が過ぎると、順次入学してきます。
9月が新年度スタートになります。
休みは、中休みや、イースター休暇、サマーバケーション、クリスマス休暇など、
2週間ほどのやすみが、1年に何度もあります。
休むときは、休む。
学校があるときは、学校へ行く。
子どもが学校を休むということが認めれていません。(体調不良などは仕方が無いですが。)
学校を休んで家族旅行に行く、違う活動に参加するなど、
もし見つかった場合は、親が注意され、罰金を払わされるそうです。
日本とオランダ、義務教育の「義務」の違いがあるようです。
学校のルール
日本の学校には、服装や外見に関するルールがあります。
小学校以上になると、制服の率もあがります。
中学校以上になると、
制服の着方の指定があったり、髪型、髪の毛の色、髪の毛の長さ、靴の色、、靴下の色やデザインなど、
細かく規定があります。
男女付き合いのルールなど、個人の人間関係、持ち物にいたるまで、ルールが決められている場合のあります。
また、教室の過ごし方としても、
授業中に飲み物を禁止したり、トイレに行くことができない場合もあります。
1日に1度、掃除に時間があります。
クラスや、学校内のあらゆる場所を、全員で掃除します。
オランダでは、外見のルールや持ち物のルール、
男女交際のルールなどはありません。
授業中、机の上には水筒が置いてあり、喉が渇いたら、飲んでもOK。
トイレも、行きたいときにいってもOKでした。
たとえ、授業中だったとしてもです。
部活
日本には、中学校と高校には部活があります。
全国調査によると、中学生では7割、高校生では5割以上が運動部の部活に入っているそうです。
学校においては、ほぼすべ下の学校が運動部の部活動を設置しています。
部活動の指導や顧問は、学校の先生が行っています。
日本の部活は、スポーツ指導という視点ではなく、
スポーツを通じた「人間形成や人間教育」的な役割を担ってきたため、重きを置かれているようです。
オランダは、部活がありません。
スポーツなどは、学校で行うものではなく、地域で行うものになっています。
サッカーチームなども地域ごとにあり、自分が住む地域のスポーツチームに入り、
スポーツをしています。(大人のスポーツチームも同様にあります。)
子どもたちが、自分の住む地域で、異なる学校の異なる年齢の子どもたちと一緒に活動をします。
スポーツクラブのため、スポーツコーチが指導を行います。
また保護者も積極的に、スポーツクラブをサポートしています。
おまけ:多様性と生き方
オランダは、色んな国出身の人が住んでいる多国籍な国です。
教室にも、1クラスに20国籍の子どもたちがいるクラスがありました。
1人1人、価値観も違えば、宗教も違う、生活習慣も違う。
そのような子どもたちが、1つのクラスで学ぶのです。
違いがある人同士が、1つの社会を創っていく。
そのような国だからこそ、「価値観」を1人1人の中に共有し、育て、創り上げていくプロセスが
しっかりと存在しています。
ピースフルプログラムやシチズンシップ教育も、4歳から導入されています。
人と人が違うということ、どんな違いがあるかを感じること、その違いがあるまま、
一緒に生きていくために、どんな価値観を共有していくことが必要なのかを、
実践しています。
「尊重」とは、こういうことですよ。
ただ、説明されることではなく、
尊重とは、どういうことかを背院生がリードしながら共に考え、練習し、振り返り、確認しながら、
全員の中での「尊重」という言葉の概念や価値観を共有していきます。
このようなプロセスがしっかりと
教育の中にプログラムとして存在している、
また実践し、定着しています。
まとめ
いかがでしょうか?
もう一歩オランダの教育について、
踏み込んでみました。
日本とオランダでは、教育のシステムや背景が異なるため、
あらゆる面において、違いがあります。
大人や社会の価値観から、
教育環境やシステムは生まれています。
国や文化が違うから、仕方ない。
どちらがいい、悪い、
どちらが優れている、劣っている。
そのような視点で見てしまうと、この違いは死んでしまいます。
この「違い」から浮かび上がってくるもの。
この「違い」から見えてくるもの。
そこから、
「何が子どもの幸福度」を考えたときに、
何かヒントや行動に繋がっていただければ嬉しいです。