視察日:2018/10/5
ユトレヒトの郊外にある小学校(Op de Groene Alm )に、視察に行きました。
8年前、6名でスタートした学校ですが、今はなんと生徒数311人!!!
校庭も素敵です。
ご挨拶をして、早速学校の様子をご紹介いただきました!
学校の様子
子供たちは、3つのエリアにわかれて活動しています。
①緑→2歳半~4歳/4~6歳
※2歳半から4歳は幼児教育の部分になり、4-12才のエリアは、小学校の管轄になるります。
幼児教育と学校は別の管轄ですが、共同でやっているそうです。
②オレンジ→6-9才
③青→9-12才
それぞれのエリアの壁や机が、それぞれの色になっていました。
枠組みがはっきりしていて、どの部屋もわかるようにしているので、
子どもたち自身が、どこで、何をしたらいいのか自分で判断できますね。
■あちこちにある視覚ツール
各教室にあるボード!
オランダの学校といえば、このボード。
本当に、どこの学校にいっても、どこの教室にいっても必ずあります。
どこに何があるか、自分たちが何をやるのかが、一目見てわかるようになっているものですね。
子供達が主体的に学ぶという環境を用意しているものです。
※年齢にあわせて、ボードのレイアウトは違いがあって、年齢にあわせてのデザインになっています。
ボードだけではなく、電子黒板もどの教室にもありますね。
残り時間がわかる「タイマー」
コミュニケーションのルールが目でわかる「信号」
この2つが、どのクラスの電子黒板でも出されていました!
タイマーで、タイムマネジメントを。
サイコロで、コミュニケーションの管理を。
それらに加えて課題の管理など、自分で考えて行動していくためのデザインの1つ「電子黒板」
わぉ!!サイコロも!!
自分のコミュニケーションに関して、表明するサイコロです。
赤:集中しているから話しかけないで
青:話しかけてもOK
?:質問があります。
自分の意思表示のツールとして、机の上に置いておくサイコロ♪
本当に、オランダは「目で見てわかる」「自分を言葉以外で表現する」ツールが、たくさんありますね。
■授業の様子
サイコロで算数の勉強中♪
ボールを転がして、四則計算の勉強をしていました^^
子どもたちが持っている教材もいろんな種類があります。
同じ学年、教科でも、子どものレベルによって違うものが渡されます。
自分のレベルにあった教材で勉強するのがオランダ!
自学習タイムは、学ぶ場所を自分で選べることも多くて、
教室の中で勉強している子もいれば・・・
廊下のスペースで勉強中の子も・・・
こちらも廊下で、自学習中タイム♪
自学習に必要なツールはこちらに・・・
■1日の流れ
毎日同じリズムで過ごします。(月-金)
8:30-14:15
※12:00-13:00 昼食、その後フリータイム
※昼食は学校のクラスで食べます
どのクラスも、
ティーチングの時間(先生が教える時間)の後、
自分で学びをプランして自分の課題を取り込む流れになっています。
3つの箱(自学習の課題提出用)があり、
自分で採点して、3つの箱のうち、1つ選んで入れる仕組みになっています。
(箱の種類)
①全部できた
②よくわかっている・わからない
③ぜんぜんわからない・教えてほしい
子どもに、学びの主体性があるので、
自分のやったことを自分で振り返るとレーニングだそう。
先生はすべての箱をチェックします。
■カンヤトレーニング(いい人トレーニング)
※いじめ帽子のトレーニング
帽子トレーニング、ここでも発見!!!
(帽子の色と役割)
白(タイガー)→社会的にいい行動をする/自分を主張し、相手を尊重する
黄色(うさぎ)→シャイ・自身がない・こわい
赤(さる)→ふざける、なんでも面白がる
黒(とり)→ボス、いじめ、攻撃的 マナーが悪い、いじめをする
色んなシュチュエーションで使われています。
休み時間の出来事をリフレクションするのに、使っており、クラス全体で学ぶことを大切にしているそうで、
帽子をかぶってロールプレーを通じて学ぶものです。
出来事を振り返りながら、様々な立場になってみて感情や、どう対応したらいいのかを学んでいくんですね。
■習熟度別の授業
1つのクラスの中で、3-5の理解度のグループわかれています。
(クラスの構成によって変動あり)
最初の15分のティーチングタイムは、全体で授業を行いますが、
それ以降の時間は子どもによって違いがあります。
・よくできる子15分→終了後は自分の課題
・普通の子→最初の15分+もう15分→その後自分の課題
・もっと説明が必要な子→募集授業(もっと説明しますが、参加する人?と募集するものです)
子どもの理解度やレベルによって、全体のレクチャータイムの後の取り組み方が異っています。
■休憩時間について
午前中15分の休憩:軽食+外で遊ぶ
お昼休憩(12:00-12:45):15分昼食タイム+30分外で遊ぶ
午後:休憩無し
■テストについて
日々のテストは、教材に用意されているテストを使うそう。
全国共通テスト(CITO)は、年に2回あり、5歳~受けます。
全国共通テストの位置づけは、あくまで「成長度」を計るテスト。
テストのために家庭教師を雇い、家庭学習するところも親(家庭)も一部いるが、
ほとんどいないそうです。
質疑応答と対話の中で・・・
いろんな質問をさせていただきました。
先生方との対話の中で出てきたことをまとめてみます。
■オランダの学校の変化について
オランダの授業スタイルも、昔は一斉授業だったし、
教師に向かって、子どもは同じ方向を向いて並んで座っていました。
今はかわり・・・。
先生の言ったことを聴くことが絶対だった時代から、
先生が言ったことが絶対ではない時代になってきているます。
時代や、社会が変わってきた中で、学校も変わってきました。
社会の変化と共に、家庭での子育てが変わってきています。
子どもに一歩的に親の意見を教えたり、躾けるのではなく、
親が子供と関わる中で、子どもの意見を聞きながらの育て方に変わってきています。
このような変化にあわせて、学校や教育も変化してきているし、
変化せざるおえないと考え、実際に変わっていっているとのことでした。
■先生の評価の方法について
クラスの授業見学をして、以下の項目から評価を行っています。
・チェックリストをもとに
・クラスの成長度
・教師同士授業を見学してFB
※コンピテンシーの実施
オランダのコンピテンシーは「自分を知る」ためのツールです。
自分が何が得意で何が得意でないかを把握し、
自分を成長させることが目的です。
学校法人は、同じ評価リストで実施されています。
1-3年目 スターター
4-7年目 ベーシック
8年目以降 専門
1項目が10項目にわかれていて、
※10項目のいくつかがOKでないと、OKとは認められないようです。
■先生評価の項目
・生徒を尊重・リスペクトした関わり、行動ができているか
・教科の内容の明確さ
・落ち着いた雰囲気
・生徒の自信を助長していく
・生徒に対してFBができる
・クラスが終わるまでの学級運営
・お互いを尊重する関係
・意図的な学級運営をすることができる
・授業の流れ
■子どものサポート体制
teachers coachの存在がある。
補習授業でもひろえない子どもたちがいたら、
teachers coachに相談して、どうサポートしていくかの対策を考えています。
だいたいは、同じ学校法人の学校に相談することが多いそう。
学校の予算は、子どもの背景によって、一人当たりの予算が変わる仕組みになっているため、
どんなこどもが通っているかによって、学校の予算は変わってくるそうです。
※子供の背景とは、親の学歴、家庭環境、構成、国籍、言語のこと。
特別支援が必要になる子は、現在4人い。
同じ教室で活動しているが、1週間に1回は、別の部屋で別の支援を受けることがあります。
■新しい教育にシフトしてから出てきた課題
子どもの行動に変化が出ていると感じている。
親が子供をリードしない結果、行動の問題がある子が増えている。
例えば・・・
・先生をリスペクトしない
・子どもがやりたい放題
・当り散らす
等など
子どもを見ると親が何を大切に関わっているかがわかるとおっしゃていました。
親が子どもに対して
・失敗しないように
・転ばないように
というように、関わってきているように感じているとのことでした。
視察の感想
ユトレヒトの郊外の学校ということで、
とても穏やかな空気が流れる場所でした。
学校の雰囲気も、先生方の空気感も、おだやかに感じました。
オランダの教室デザインは健在で、
その上で学校が考えた工夫が見れるのが、とても幸せなことだと思っています。
グループごとの色分け。
本当に徹底されていて、教室や、廊下など。
それぞれのグループカラーでわかりやすくなっていました。
一番感動したのは、
高学年のエリアで、自学習の時間、
教科や先生によってかなり広いエリアの中で、
自学習する場所を自分で選ぶことができている点でした。
先生の近くで教えてもらいながら学習したい子は先生の近く。
自分の席がいい子は、自席で。
廊下で外の景色を見ながら一人で集中している子。
リビングルームみたいなエリアで友達数名と一緒にわいわい勧めている子。
自分が集中して勉強するデザインって、人によって違いがある。
これは、大人になってから実感した1つです。
それが、学校の中で、許されているということの価値。
「自分で学ぶことを学ぶ」
初等教育の中心にあるこの言葉を、実感せざるおえない視察となりました。
今回、視察させていただいた中で、
刺激や変化が苦手な子がいるクラスがありました。
そのクラスには、近づかないでと注意があったので、私達は近づいていません。
このような対応1つ1つにも、学校のあり方を感じさせていただける機会だなと思いました。
いつも思いますが、オランダと日本、国は違えど、起きていることや課題は同じように感じています。
世界も、人の意識も、どこかで繋がっている。
不思議だなぁといつも思います。
世代や時代の課題として浮かび上がってきているものもあるんでしょうね。
そう思うと、国を超えて、同じ課題に取り組む者同士が行う対話は、
本当に深く、貴重な学びの機会だなと感じています。
素敵なご縁と、貴重なお時間、ありがとうございました!